27Mar
数年前のことですが、僕が船に乗ろうとして車で港まで行こうとしていました。
その途中に飲食店があったので、そこに入ってご飯を食べて、それから車に乗ったのですが、なんと、バッテリーが上がっていました。ライトをつけっぱなしだったんですね。
船の出発までの時間を確認すると、残り1時間を切っていました。ここから急いでも30分はかかる。
もう船の出発時間までに着くことは無理かもしれない、そう思っていました。
仮に間に合わないとしても車は動かさなければならず、そこでロードサービスに電話をしました。今はジャフに入会しているのですが、そのときは自動車保険に付随しているロードサービスに連絡をしました。
とりあえず、
「船の出発時間があるので急いでいる」
そういった旨を連絡して、半ばあきらめた気持ちで待つことにしたのです。
少し待っていたときに、
「あと、5分くらいで着きます。車のボンネットを開けて待っていてください」
そんな電話がありました。そこまで早く来てくれるとは思っていなかったので、少し期待をして言われたとおりにボンネットを開けて待つことにしたのです。
電話をしてから10分ちょっとくらいで急いでかけつけてくれたのです。
きてくれたのは、小さな町の自動車修理工場の社長さんでした。
たぶん、ジャフだったらこんなに早くは来てくれなかったかもしれません。
そうして、すばやい対応でエンジンをかけてくださいました。
通常、修理が終了したら、書類にサインなどが必要だろうかと思うのですが、
「急いで出かけてください」
そう言ってお礼も言えずに出発をしました。
結果的に、何とか船の出発時間までに間に合い、船に乗ることができたんです。
僕は、普通に船に乗れたことがあまりにうれしくて、あの社長さんに今からお礼を言おうと電話しようとしたときに、ふと、ここは直接お礼を言うのではなく、間接的に言おうと思ったんです。
要は、保険会社に電話をして、そこからあの社長に礼を言ってもうおうと思ったんです。
先ほどの保険会社に電話をして、
「どこそこの自動車工場の何とか社長さんのサービスがあまりにもすばらしかった。だから、その方にお礼を言ってほしい」
そう伝えると、
「分かりました。その人に必ず伝えておきます。連絡ありがとうございました」
そう言ってくださったんですが、その声は少し喜んでいるようにも聞こえました。
というのも、こういう保険サービスの電話なんて苦情ばかりで怒られていて、褒められることなんてないからよけい嬉しかったのかもしれません。
僕も、かつてコールセンターで働いていて、毎日のように怒鳴り声があったので、ほんのたまに褒められたときの喜びというのは理解できるのです。
こうやって間接的に褒めると、電話を受けた保険やさんもうれしいし、自動車工場の社長さんだって、取引先である保険やさんから褒められたら、僕から褒められるよりもずっとうれしいと思うんですね。
そんな風に、間接的に褒めることによって、喜びの輪がまるで地平線の海のように、どこまでも広がっていくような気がして、そんなことを想像していくと、僕も何か、うれしくなっていったんです。
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