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愛媛松山で女性のための性感アロママッサージ

圧倒的な絶望と、その先の微かな希望

 今から10年前の34歳くらいの時に、よく思っていたことが、

 

「人生とは、これほどまでにも、つまらないものなのか?」

 

 ということでした。

 

 人生がつまらなかった理由として、言うまでもなく僕の努力が足りなかったからかもしれません。

 でも、それ以外にも、何らかのどうしようもない事情があったように思うのです。

 

 例えば、3歳くらいから18歳くらいまで喘息で苦しんだこととか。

 そのころの僕は、喘息の発作が怖くてほとんど外泊をしたことがなかった。家に閉じこもっていたわけでもないけれど、どこか遠くへ行くことはほとんどできなかった。

 

 その他に、おそらく人生でいちばん苦しめられたであろう兄からのいじめだった。

 理由は分からないけれど、僕が中学2年ごろ、兄からいじめられる。

 身体的な暴力はなかったけれど、精神的な暴力はひどかった。

 常に、

「お前は何もできない」

 といい続けてくる。

 僕が中学3年になったときに兄が車の免許を取得して、特に乗りたくもなかったけれど、ドライブに誘われた。

 そのときに言われた言葉が今でも覚えている。それは、

「お前には絶対車の運転などできない」

 ということだった。

 僕は兄の言ったその言葉を信じ、25歳まで運転がまったくできなかった。

 

 高校受験も担任からほぼ間違いなく受かるといわれていた進学校も、

「僕には無理かもしれない」

 そう思い込み、第一志望をあきらめた。

 そうして普通の高校に進学すると兄からは、

「そんなダメな高校へ行くくらいなら死んだほうがいい」

 そんなことを言われ続けた。

 でも、心の中では、

(兄のせいで進学をあきらめてしまったのに・・・)

 と、絶えず恨みがわきあがってきた。

 

 そもそも、兄が僕をいじめてくる理由がさっぱり分からない。

 兄は僕と違い容姿もよく健康で頭も良くて、僕から見ても羨むような存在であったのにも関わらず、ひたすら3年ほど嫌がらせが続いた。

 

 高校2年のときに、兄は東京へ行った。

 ようやく兄から開放されたけれど、「自分は何をやってもダメだ」という呪縛は一向に外すことなどできなかった。

 兄にいじめがあうまでは、どちらかというと人気があって友達も多く、それなりに勉強もできた。

 でも、自分がダメだという思い込みに入ってしまってからは、友達もできず、人間好きだったのがむしろ人間嫌いにもなっていった。

 そんなストレスがあったせいか高校1年のときの体重が65キロだったのが90キロとなった。ただ、身長も170センチから180近くに伸びていた。

 

 さらにいえば、髪の抜け毛も高校時代に驚くほど増えた。髪の量は多かったけれど、将来きっと禿げるだろうなとそのときに確信していた。

 

 結局、高校時代には友達がほとんどできず、彼女などできるはずもなく、さらに、学力はさらに落ちていき、目指していた国立などいけるわけもなく、3流私立大学に進まざるをえなくなった。

 

 大学進学のため、愛媛から大阪へ引越しをした。

 環境が変われば何か変わるかと思っていたけれど、何も変わらなかった。

 高校時代よりは、かろうじて人間らしくあれたような気がした大学時代だけれども、相変わらず、自分はダメだと信じて疑うことがなかった。またしても彼女ができなかった。

 

 困ったのが就職活動。

 バブルが崩壊していたとはいえ、理系の大学だったので、就職率はほぼ100%だったのにも関わらず、

「僕にできる仕事などない」

 とまたしても、どうしようもない自分が現われてくる。

 もう何でもいいやと受けた就職先は、ゴミを焼却する施設だった。

 入社したときに言われた先輩からの言葉が、

「何で大学卒業してこんな会社に就職したん?」

 だった。

 僕の主な仕事は、5トンのクレーンを動かし、ゴミをそれでつかみ焼却口まで運ぶことだった。それはまるで、UFOキャッチャーそのものだった。

 

 ゴミの焼却所で1年ほど勤めたときに、

「中国へ行かないか?」

 との誘いに、嫌だけど断りきれず、その会社を辞めることとなった。

 

 でも、次に勤めた会社が、奇跡的にもいい会社だった。

 ほとんどパソコンができなかったのにも関わらず、ソフト開発部門で働かせてくれた。

 社長からは、なぜか期待されて、

「1年くらいかけて開発言語を覚えてくれ」

 と声をかけてくれた。

 

 その会社に10年以上勤めていたあるときに、尊敬していた社長が亡くなった。

 そうして、子息が社長となった。

 僕と社長の息子は、それほど仲がよくなかったので、色々と嫌がらせがあった。極端なまでにボーナスが下げられたりもした。

 少しずつ芽生えた自信も、失ったかのように感じた。

 

 34歳になったとき、あらゆるものを失っていた。

 高校時代からの変わらずメタボで、頭髪は薄くなっていき、婚約者には捨てられ、職場でも社長の息子によって、ほとんど窓際に追い詰められていた。いったい何のために生きているかなどまるで分からない。

 

 そのときに確信したのが兄の、

「お前は何をやってもダメだ」

 という呪文だった。

 ダメな自分を憎むのと同時に、いやそれ以上に、自分の人生をダメにした根本の兄を憎んでいた。

 「もし、兄がいなければ、僕はもっと楽しい人生があったのでなかっただろうか?」

 「進学校に通っていれば、今頃は、いい企業に就職し、素敵な奥さんがいたのではないだろうか?」

 などと、どうしようもないことをひたすらループのように考えたりしていた。

 

 そうして、なんてつまらない人生なんだと嘆くだけの日々。

 

 そんなとき、35歳になって、さらなる不幸が自分の身におきた。

 それは、これまでの不幸など子供だましかと思えるほどの、圧倒的な、これまでにも経験したことのないような絶望だった。

 

 もっといえば、

 

「どうあがいても絶望」

 

 だった。

 

 この状態をうまく言葉にできないけれど、この絶望から救われる道は、死しかないと思っていた。

 たぶん35歳から37歳の2年間は、生と死とその狭間にいた。

 朝起きてまず考えることは、どうやって死ぬべきであろうかだった。でも、その死の先の世界を想像しただけで、あまりもの恐ろしさにわれに返って生きようとする、そんな日々の繰り返しだけだった。

 

 あまりもの孤独に耐えることができず、夜になると、「命の電話」にTELをした。ほとんどが会話中でつながることはあまりなかったけれど、かかったときには、ひたすら泣き言をうったえていた。

 

 救いようのない苦しみがこれからも永遠のごとく続くかと思ったけれど、37歳の冬のときにその絶望との闘いが終わった。ある意味、自分にとって奇跡的なほどの出来事だった。

 

 圧倒的なまでの不幸におびえ震えていた絶望から開放されたとき、これまでの悩みが嘘のように消え去っていた。

 

 正直なところ、ハゲていたことにかなりのコンプレックスがあったけれど、そんなこと、本当に、どうでもいいように思えていた。あの苦しみに比べれば。

 

 あれだけ憎んでいた兄さえも、ほんと、大したことのないように感じていた。

 

 そうして、38歳のときに、これまで拒絶し、もう二度と会わないと決めていたにも関わらず、20年ぶりに兄と再会した。

 久しぶりに出会ったとき、あれだけカッコ良かった兄が普通のおっさんになっていたことに驚いた。

 あと、甥っ子と姪っ子たちには想像以上に不思議と好かれていて、数日間、ずっと遊び続け、それは思いもよらないほどの楽しい日々だった。

 

 たぶん、あのときの圧倒的な絶望と出会わなければ、兄と会うことはなく、その子供たちと出会うこともなかった。

 

 34歳の、人生がつまらないと感じていたとき、何か幸せなことが起これば、そんな状況から打破できるのではと思っていたけれど、実際は、

 

「圧倒的なまでの不幸に出会うことによって、幸福に感じることができるようになった」

 

 と、思いもしないことが自分の身に起きた。

 

 今、44歳の僕が、もし、自分にとっての自信の根拠があったとするならば、それは、

 

「どうしようもない絶望に耐えた」

 

 ことであって、何か幸せなことが起こったからなどでは、断じてない。

 

 今、いい歳をし、失業をしたりして相変わらずダメな自分で、嘆いたり、時々落ち込みたくなるけれど、

でも、そんなときでも、

 

「自分は何かできるのではないのだろうか?」

 

 と、勘違いしている自分がいたりする。

 

 とりあえず、今の僕の目標は、

 

「カリスマ性感マッサージ師」

「伝説の性感マッサージ師」

「日本一の性感マッサージ師」

 

 になり、全国からお客が訪れ、予約が殺到することだけど。

 

 夢物語だし、もし叶うとしても、まだずっと先。だけど僕はいつか、そうなるような気がしている。

 

もちろん、何の根拠もないけれど。

 

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